明日、家族や恋人が戦地に行ったとしたら?少しだけ考えてみよう
イラク・アフガン帰還兵の証言。戦場で何が起こるか?
安保法案が可決しました。
それですぐに日本人が戦地に赴くということはないという言葉を信じたい。。
紛争地帯では何が起きているのかというのはそこに行った人にしかわからないものだと思うのです。。
そうした人たちの体験を集めた本をご紹介します。
書籍「冬の兵士-イラク・アフガン帰還米兵が語る戦争の真実」
2009年に出版された書籍です。
「反戦イラク帰還兵の会」で開かれた公聴会では多くの帰還兵が自分がイラクで経験したことを話しました。その証言を集めたものがこの本です。
「反戦イラク帰還兵の会」とは?
反戦イラク帰還兵の会は「イラクからの即時無条件撤退」「退役・現役軍人への医療保障その他の給付」「イラク国民への賠償」の大きな3つの目的のため2004年に活動を開始しました。
2008年3月13日から16日にかけて「冬の兵士」と題した公聴会を開催し、大きな反響を呼びました。
この「冬の兵士」というネーミングですがもともとは1971年ベトナム帰還兵によって行われた公聴会で使われた名前です。1971年のベトナム帰還兵たちはベトナムで行われた米兵のベトナム人に対する残虐行為を証言しました。
イラクやアフガンで何があったか?
本にはたくさんの証言が載っていますが、かいつまんでご紹介。
出典:pixabay
交戦規約が守られない
戦争には「交戦規約」というものが厳密に決められています。民間人やけが人を攻撃してはいけないし、病院、モスクも攻撃してはいけないなどかなり細かい規定があります。この規定は当初は厳密に守られていたものの交戦状態が続くにつれ運用管理がどんどんずさんになった様子がわかります。
ある兵士は「誰が襲ってくるのかわからない」この猜疑心で大きな荷物をもって近づく民間人に銃を向けることを命令され、実際に攻撃します。後で調べるとその人は野菜を大量に運搬していただけだった。
イラクやアフガンの捕虜に対する虐待
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虐待は蔓延しており、その場にいると疑問を持たずに行う兵士、いやだと思いながら見ているしかない兵士、命令のもと自身の意思ではないが参加してしまう兵士。
ただ、疑問なく行った兵士も帰還後にとても後悔していたり場合によってはPTSDを発症したりしています。
ストップロスによって人生が狂う
ストップロス(本来は投資の用語だと思うのですが)という政策が2007年に発表されました。これは、志願によって入隊した兵士の除隊期限を政府の都合で延長する制度で、不当に兵士を拘束する制度でした)
ようやく生きて帰還して大学への進学を希望していた(入隊の時に約束された給付金を進学に使うつもりだった)若者は入学目前でストップロスのため再び徴兵されます
。彼は鬱病を発症し自殺を図ります。命は助かりましたが彼は軍から詐病として逆に訴えられます。軍の弁護士に相談しても支援を受けられず結果として軍を解雇(「不行跡」という重罪)された彼には進学の給付金は支払われず現在は病気と闘いながらアルバイト生活をしている。
女性兵士や性的マイノリティに対する日常的なハラスメント
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女性兵士の割合は今や1割程度。その女性兵士たちのほとんどが男性兵士から性的な嫌がらせ、時には強姦に至る場合すらあること、ゲイやレズビアンに対する嫌がらせは日常的だがそれを訴えても黙殺されてしまうこと。
彼らは基地に帰ってからも常に身を守るために神経を使わなければいけない状況で過ごします。
その他、大学に行く給付金のために志願したわが子が戦地で亡くなってしまった両親の話や、イラク人のジャーナリストの話など様々な立場の人が証言をしています。
生きるために、人を殺してしまった兵士は今もその重圧を心の底に抱えて生きています。
この本に掲載されている証言者には氏名のほかに所属していた部隊と年齢が記載されています。
驚くのはその若さです。20代、30代が多いのですが中には17歳で入隊19歳で派遣された兵士もいます。そして若年の多くは裕福な家庭ではなく進学給付を目的に入隊、あるいはあまり深い考えはなく入隊した人が多いのです。
平和な日本で暮らしている私たち日本人は忘れがちですが、今この瞬間にも世界のどこかで理不尽に命を脅かされている人がいるということ、ようやく戦争から帰ってきても心に負った傷のあまりの大きさにショックを受けました。
余り不安をあおるつもりはないのですが、知っておくことは必要なのではないかと思い少しご紹介しました。
米軍のアフガン撤退が延期になったとの報道もありました。これもとっても残念で早期に終結してほしいです。
また、この本に載っているようなこと、日本の人たちのだれにもこんな思いをしてほしくない、そう思います。