出産の先送りで起きる「社会的不妊」について
社会的不妊、産む時期を迷う女性がたくさんいる。
現在はカップルの6組に一組は何らかの不妊治療をしていると言われています。
少子高齢化の日本で政府も出生率を上げようと不妊治療に補助金を出す対象を広げるなど対策をしています。
社会的不妊、という言葉もあるのですがご存知ですか?
社会的不妊とは
なんとなく、子供は欲しいと思っているけど自分にとって労働環境などによって産める時期、環境ではないという「産みたくても産めない」状況や、事情があって結婚・出産が先送りになった結果、年齢的に妊娠しにくく不妊になってしまったことを言います。
数年前NHKの不妊番組でも取り上げられた言葉ですのでご存知の方もいると思います。
初産年齢の推移
厚生労働省発表の女性の初産年齢の推移です。
出典:内閣府「 平成27年版 少子化社会対策白書」
2011年には30歳を超え、現在も高くなり続けています。
医学的に理想な初産時期とは?
女性の出産には女性ホルモンの働きが必要です。
一般的に妊娠に必要な女性ホルモン分泌は、17~18歳がピークになり、20代では安定に分泌されます。
30歳を過ぎるとホルモン分泌は減少し始めます。
また、20代の女性が出産した赤ちゃんの先天異常の比率も他の世代よりも低くなっています。
そう考えると、20~25歳で初産を迎えるのが理想的となります。
どうして「産みたくても産めない」のだろう?
「マタハラ」自分が受けたわけではないのだけど…
妊娠をしている女性や、産休を取ろうとする女性に対して心無い言葉や制度利用を受けさせない、退職を迫るなど一部で報道されています。
こういった報道を見ると「自分が会社に迷惑をかけるのではないか?」「今は業務が忙しい時期だから産休は閑散期に…タイミングはいつだろう?」なんて出産前から心理的ブレーキがかかってしまいますよね。
キャリア形成

女性の社会進出、なんていう言葉も古臭く感じるほどに女性が働くのは当たり前になっています。
男女とも4年制大学への進学率が高くなっていますので、22歳で就職、新入社員からようやく社会人として慣れてくるまでに1-3年。
25歳と言えば「これからいよいよ実力をつけていく時期」に重なりますし、順調に社会人として成長をしていくと仕事の面白さがわかってくる時期です。
その時期に恋人がいたとして、上司や先輩から社会人としてまだ未熟と思われている自分」が結婚はアリにしても(時期によってはこれも言い出しにくいのに)出産はもうちょっと先でもいいような気になってきます。
所得の問題
平成25年の20歳代前半(20~24歳)の男性平均年収は265万円、女性は226万円
20歳代後半(25~29歳)で男性、371万円、女性は295万円です。
この平均年収は男女とも徐々に低くなっています。
仮に20代後半で出産しようとした場合、産休、育休で女性の所得は一時的にゼロになる可能性もあります。貯蓄をしていたとしても男性一人の所得で家計を賄わないといけないのはこの金額では正直、厳しいものを感じます。
また、出産後女性が元の所得を約束されるとも限りませんし、早期の復職は高額な保育料が必要な場合もあります。
これでは、やっぱり貯蓄をある程度して会社でとりあえず自己主張ができる程度の経歴、年数を重ねてからじゃないと社内で「生みます!(産休摂ります)」って言えませんよね。
「寛容な社会」ってやつは違うと思う
社会的不妊に関する記事やハラスメントに関して、必ず出てくるのが「上司の理解、社会みんなで受け入れましょう、人にやさしく、etc…」様々な耳にやさしい言葉が出てきます。これ、もういつも腹が立つんです。
だって、若年層の所得が上がらないのも一時期の休職でキャリアがリセットされる問題も社会のシステムの問題です。弱者にやさしいシステムは業績を求められる私企業が率先して行うには限度があります。と、するともう少し上が作るしかないですよね。
ちょっと大げさだけど現状ってこうだよね。
理解ある部長から社内のみんなへのお願い
○○さん、お子さんができたんだって!おめでたい!!少子高齢化社会に子供は大切だからみんなで応援しよう!私は理解ある上司だからマタハラなんてしないよ!みんなもそうでしょ??
忙しいけど彼女の所属部署のみんなで頑張って産休女性のカバーをしてあげようじゃないか!じゃあみんな頑張って残業してねー!あ、残業代はちょっと払えないからね。
しようがないから、非正規一人安い時給で雇うよ。一人減った分一人補充するから残業なんてしなくて大丈夫でしょ??産休明けに非正規の人には辞めてもらうからいいよー♡
産休補充で1年契約の仕事をするしかない女性の言い分
1年契約の仕事なんてしてないで正規で働けばいいのに、っておっしゃいますが、ないんです。
山のように非正規の仕事はあるのに、正規で定年まで一時期成果や業績が下がる時期があったとしても退職に追い込まれないお仕事は一生懸命求人票を探したけど、見つかりませんでした。
でも、子供教育費がかかるから働かざるをえません。
この例は少し大げさかもしれませんが、決してまったくの作り話でもありません。
やっぱり、現状を改善するのではなく、新しい社会システムが社会的不妊を解消するためには必要だと思うんです。