資生堂のメンズヘアケア&スキンケアブランド「ウーノ」は、生体反応データを分析して顧客のインサイトを可視化、マーケティング戦略やコンテンツの企画開発をするSOOTH株式会社(東京都中央区・代表取締役 額田康利)とともに、急増するオンラインミーティングにおいて男性メイクが与える心理的影響を可視化する検証実験を行いました。
<検証実験の背景と内容>
昨今、相手に健康的な印象を与えるためにBBクリームやリップクリームを用いたり、自分がなりたいイメージに合わせて眉の形を整えるなど、メイク意識の高い男性が増えています。また、新生活様式の下、オンライン上のコミュニケーションが増えたことで、画面に映る自分の印象に気を配る男性も増えてきているようです。
そこで、実際に面会することに比べ相手の印象を判断しにくいオンラインミーティングにおいて、男性が身だしなみの延長線上にある男性メイク(肌の色むらやキメを整えて見せるBBクリーム、眉の形を整えるアイブロウ、血色をよくみせるリップクリーム)をする場合とメイクをしない場合とで、インタビュイー(その男性自身)とインタビュアー(デジタル画面を通してインタビューする相手側)に及ぼす心理的効果の差異を検証(※1)しました。
今回の実験では、簡易型脳波計と耳朶(じだ)装着型心拍計測機を装着し、被験者がどのような感情を抱いているかをリアルタイムで可視化できるSOOTH独自のアプリケーション「脳内モニター」を用いて、オンラインミーティング中の対象者(男女6名)の生体反応(脳波・心拍)を測定。また、インタビュアー・対象者)/インタビュイー双方に、ミーティング終了直後にインタビューの印象について問うアンケートを実施。対象者6名の生体反応(脳波・心拍)データ、及び、インタビュアー・対象者、インタビュイー全員が回答したアンケート結果より、男性メイクがオンラインミーティングに及ぼす心理的影響を明らかにしました。
「第一印象」を、「とても好感をもった」(100%)から「まったく好感を持てなかった」(0%)の100段階で評価した平均値は、「メイクあり(71.04%)」の方が「メイクなし(47.71%)」より平均値として23.33pt高いという結果に!
また、インタビュイー個別の評価をみても、4人全員において「メイクあり」のほうが「メイクなし」よりも評価が高くなっています。
その回のミーティング全体に対する印象評価を「メイクあり・なし」で比較しても、インタビュイーへの全評価24評価(4名への評価×インタビュアー6名分)中、15評価(62.5%)において「メイクあり」の回のほうが「メイクなし」の回よりも好印象という結果になりました。
外見の印象(ヴィジュアル要素)と内面の印象(ムード要素)、カテゴリーそれぞれに対する評価の平均値の差を比較すると、外見の印象においては「メイクあり」平均5.59点に対し「メイクなし」平均が3.43点、内面の印象においては「メイクあり」平均が4.95点なのに対し「メイクなし」平均は3.42点。
メイクが外見の印象評価においてポジティブな影響を与えているにとどまらず、内面の印象評価においてもポジティブな影響を与えるという結果が出ました。
「メイクあり」に関して肯定的なコメントとしては、「健康的な印象」「さわやかそう」「清潔感を感じる」「すっきり」「若々しい」「華やか」など。また、「内面」の印象に関する定性的なコメントでは「凛々しい」「信頼できそう」「優しそう」「話しやすそう」などのワードがあげられていました。
対面によるミーティングでは、周囲の机や壁などの視覚情報、雑音などの聴覚情報、さらに匂いなどの様々な要因が複合刺激となり「相手の外見」から受ける印象を判断しにくいと考えられます。
今回、オンラインミーティングであるからこそ、相手の印象に影響する情報が限られ、顔の外見の情報から評価する比重が高まり、「メイクの有無に対する直接的な印象の差異」がより顕著に出たと考えられます。しかし、恐らくメイクの有無による印象の差異は、リアルに対面するときにも少なからず生じていると推測します。
加えて、インタビュアーとともにオンラインミーティングを客観的に見ている対象者から、明確なアンケート結果と有用な生体反応が得られた点からも、この取り組みは非常に画期的で、成果も極めてすばらしいと考えます。
具体的には、インタビュイーの達成度実感に関しては全員が「メイク時のほうがミーティングの達成度が高かった」と全員が回答(上図)。メイク時は本人も自信を持って話ができたと推定できます。インタビュイーの内面から醸成された自信が相手に伝わり、「内面の印象」の評価をポジティブにしたと推察します。
さらに注目すべきは、「メイクをしているか否か」を判断できない場合でも(※2)、実際にメイクをしているほうが好印象に映っているケースが多数であった点。これはすなわち、「メイクをしていること」に対して好印象を抱かせたわけではなく、メイクをした顔自体が視覚的に好印象に映ったということです。
新しい生活様式が求められているこれからの時代には、オンラインでもいかに相手とフランクに会話できるかが重要なスキルの一つになると思います。
今回の取組みから、「相手をリラックスさせること、相手が話しやすくなる“余裕感”のようなものを感じさせること」が好印象を与え、内面の印象に関してもポジティブに見なしてもらえることに繋がるので、オンラインでのコミュニケーションのテクニックのひとつとして、メイクを取り入れてみるのもいいかもしれません。
芝浦工業大学 名誉教授・SIT総研 特任教授
東京大学工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科計数工学専門課程修士課程修了。日立製作所中央研究所等を経て(その間、東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻後期博士課程修了。博士(工学))、1999年より2019年まで芝浦工業大学工学部教授。2006年輸液バッグのデザインでグッドデザイン賞、2007年日本感性工学会技術賞、2017年日本感性工学会出版賞等受賞。日本バーチャルリアリティ学会フェロー、日本学術会議第三部会員。研究分野:バーチャルリアリティを利用したインタラクティブシステム、感性情報処理、医薬品インターフェース、感覚情報・知識情報・生体情報処理および「人に優しい」情報呈示法の研究。
※1.生体反応データ(脳波・心拍)の測定とアンケートにより検証生体反応データ(脳波・心拍)の測定とアンケートにより検証
※2.「インタビュイーがメイクをしていると思うか」という設問で、「メイクあり」のインタビュイーを「メイクなし」と誤って推測したケースにおいても、そのインタビュアーを好印象と評価するケースが多かった。
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