少年A手記発表を聞いて‐書籍「友罪」のご紹介‐
元少年Aが手記を出版したと聞き薬丸岳さんの小説「友罪」をご紹介します。
さて、少年Aの書籍出版について騒がれています。
実際に読んでいないワタシでは今はこの話題には触れられません。
ただ、今まで犯罪を犯した人が出版した書籍を数冊読みましたがそういった本
は共通して黒いオーラ、と言うか彼らの強烈な歪んだ何かとある種のナルシシ
ズムが凝縮されていて理解に苦しみ、理解できない自分に安堵するというとっても不
安定な気持ちになります。
今回注目の本「絶歌」というタイトルからも彼がある種の自己陶酔の中にあるのではないかと不安になります。
あえてそういった彼らの側にたって本の感想を述べるとするなら彼ら自身が苦
しんでいることは間違いなさそうだ、ということだけです。
上手く表現できていないですね。ごめんなさい…
罪を犯した方の手記に興味がある方は複数冊
読んでみてください。読んでいる間は結構辛いです。面白くないし、苦行の様
でもありますが、一冊では「なに??こいつ??」で、終わってしまうと思う
のです。
薬丸岳さん「友罪」のご紹介
薬丸岳さんは少年法や被害者、加害者の苦しみをテーマにした小説を多く出版
されています。
テーマとしては重たい物が多いのですが読んだあと罪を償うこ
ととはなんなのか、許すとはなんなのか、考えさせられます。
この「友罪」は2013年に出版されました。
ちょっとだけあらすじ
主人公(元ジャーナリスト)益田が偶然同じ仕事の寮で隣室になった青年、鈴木はちょっとかわっていた。
周りとあまりなじもうとしない人を避けている印象があったが、交流を続けて行くうちに少しずつ心を通わせるようになる。
その人物が昔世間を騒がせた未成年者による連続殺人の犯人かもしれないと疑問を持ったとしたら?
物語前半は益田と鈴木、彼らの会社の同僚達を中心に展開、あまり人にはなじまないながらもこつこつと仕事を続ける鈴木に好意を寄せる女性の登場。
中盤からは鈴木の医療少年院時代母親の役割を担って彼をサポートした女性も登場します。
この小説では鈴木の周りを取り巻く人物の葛藤が鬼気迫る感じで描かれています。
そして作中に出てくる鈴木の犯した事件が「酒鬼薔薇事件」を思い起こさせます。
薬丸さんはそれを否定なさっていますが、この本を読んだ誰もが「鈴木=少年A」と想像してもおかしくありません。
関わった人間が殺人犯、ただ自分たちだけの関係ではその人は決してつきあえないほどの人間ではなく、むしろ好感の持てる人間。
きっとその人の過去を知った時点で苦しくなりますよね。好感を持つ前ならさっさと縁を切っておしまいでいいのでしょうけど。
「友罪」にでてくる登場人物はみんなどこか心の傷を負っています。
鈴木に関わることで自分の過去と向き合い、葛藤します。
さらに鈴木もある種の幼い狂気の片鱗を見せる不気味な瞬間もあります。
分からないけど考えてみる
2年前読んだ時には漠然ととらえていた物語が今回の報道に触れてワタシの中で現実味を帯びた物にかわりました。
「少年Aはまだ施設や病院のようなところにいて社会復帰はしていない」と思いこんでいたんですね。
もう一度この「友罪」読んでみようと思っています。
2年前とは違った思いを抱くような気がしています。
元少年A「絶歌」も出版に関しては賛否両論ありますがチャンスがあれば読んでみると思います。(自分で購入する気にはなれませんが、図書館に蔵書されれば読んでみたいです。)
でも感想はやっぱり重苦しく「ワカラナイ・・・」、不快に感じると思います。
痛切に願うのは元少年Aがつらいながらも自分の人生を全うしてくれる事、もう二度と罪を犯さないで欲しいという事です。
彼が罪を犯した年齢と同じ年ごろの子供を持つ親として心からそう願っています。
出典:pixabay
お時間が許す方は「友罪」読んでみてください。