花粉症の新治療法「舌下免疫療法」どんな人に有効?いつ始めるの?
スギ花粉の新治療法舌下免疫療法とは?
寒い日が徐々に減ってきて、春の気配を感じると心配になるのがスギ花粉情報です。敏感な人では、もうすでに花粉の気配を感じているという人もいます。これまで花粉症は対処療法として抗ヒスタミン剤でくしゃみなどの深い症状を抑えていましたが、近年「舌下免疫療法」がアレルギー治療として近年注目を集めています。今回は、保険適用にもなりますます注目を浴びる舌下免疫療法について説明していきます。
舌下免疫療法とは?
これはスギ花粉のエキスを舌の下に投与して、アレルゲンに少しずつ体を慣らしていく減感作療法の一種です。推奨治療期間の3-4年の間は毎日続ける必要があり、途中でやめてしまうと元に戻ってしまうため我慢強く継続していかなければなりません。
体にアレルゲンを慣れさせる療法を「減感作療法」と呼び、舌下免疫療法以前も皮下注射による減感作療法は行われていました。それは、アレルゲンのエキスの入った注射を行うもので、頻繁に病院に通わなければならず、初期段階では注射後も反応が強く出てしまい、注射後に腕が腫れてしまうこともありました。
舌下免疫療法では通院の回数も減らすことができ、何より「注射」のストレスがないので以前よりは実行しやすい治療法です。
出典:写真AC
治療開始は花粉の季節にはできない
そろそろ花粉の季節なので、楽になるのなら治療を始めたい!そう思うかもしれませんが舌下免疫療法を始めるには適した季節があります。治療の開始時期はスギ花粉の影響のない6月以降秋にかけてです。これは、杉の花粉が飛散する時期には体の中にすでにアレルゲンにさらされており、そこでより過剰にアレルゲンを投与するとよりひどい抗原抗体反応を起こし、症状が悪化する可能性があるからです。
ハウスダストやヒノキ花粉への効果は?
舌下免疫療法が日本で保険治療として認められたのは2014年です。これはスギ花粉に効く「シダトレン」が販売されたことにもよります。シダトレンがヒノキ花粉のアレルギーには有効とは言えないという事例もあります。また、ハウスダストは従来の減感作療法の薬はありますが、舌下に投与するタイプの薬がないため、現在舌下免疫療法はスギ花粉症の人がメインになっています。
【参考】スギ花粉症に対する舌下免疫療法のヒノキ花粉症への効果
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005116679
誰でも受けられる治療なの?
ヒノキ花粉対策の舌下免疫療法の治療対象者は「スギ花粉症の12歳以上の小児および成人」です。
また、治療が受けられないのは以下の方です。
・β阻害薬(降圧薬)を使用中
・治療開始時に妊娠している場合
・不安定な気管支喘息がある場合
・重篤な疾患がある場合(悪性腫瘍、自己免疫疾患、免疫不全症、重症心疾患、急性・慢性感染症)
・ステロイド内服中、抗癌剤使用中
いずれにしても医師としっかり相談をして専門医の元で治療を進めなくてはいけません。
副作用は?
アレルゲンを直接投与しますので、副作用として口腔内のかゆみがあげられています。しかし、この副作用は皮下注射の減感作療法よりは弱いものだとされています。また、アナフィラキシー(短期間で強いアレルギー症状が出ること)の実例(約1億回の投与のうち1回の稀な頻度で、死亡例の報告はありません。)もありますので、医師の指示に従いながら治療を進めます。
【参考】スギ舌下免疫療法初回投与後に生じたアナフィラキシーの 1 例
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjiao/34/4/34_221/_pdf
効果は?
シダトレンの投与によるスギ花粉症の効果は約半数です。一年目で改善される例でいえばおおよそ20%になります。長期感続けた方が効果があることはわかっていますが、効果がない例もありますので、専門医と相談し、自分のライフスタイルも検討しながら、治療を開始するかどうかを決定していきます。
舌下免疫療法はすべての病院で受けられるわけではない
シダトレンを使った舌下免疫療法を行える医療機関(医師)は十分な知識と経験があり、薬剤に関する知識を持った受講認定医だけです。行っている病院は限られますので、主治医や、ホームページで診療機関を調べて相談してください。
花粉症治ると嬉しいけど長期間の療法です
シダトレンを利用した舌下免疫療法はスギ花粉症に有効な治療です。今までは対処療法しかなかったので、症状のひどい方には賞状そのものが改善するのはうれしい療法ですが、最初にも紹介した通り推奨期間は3-4年、最低でも2年間は毎日薬を摂取しなければなりません。
習慣になればあまり意識しないで続けられますが、不規則な生活な方はお医者様と十分に相談し、自分に合った花粉症との付き合い方を見つけてくださいね。
記事参考
シダトレン添付文書
http://www.jshp.or.jp/cont/14/0130-1-2.pdf