二村ヒトシ×アルテイシア　Special対談　第5回

アルテイシアの母の死、二村ヒトシの母親越え 私が恐ろしいなと思ったのが、母が死ぬちょっと前、もうシワシワの老婆でミイラみたいなのに、お医者さんに「誰か男の人紹介して」と言ってたんですよ。それが母に会った最期なんですけど。
結局、死ぬまでそれしかなかったんですよね。「男を捕まえることでしか幸せになれない」という母を気の毒な人だと感じました。
私が「男に選ばれる」「それで自分の価値が決まる」的な概念を毛嫌いするのは、たぶんそういう母の不幸を見てきたこともあるのかなと。だから女性に対して「自分の価値は自分で決めよう」「男に選ばれることに全力を注ぎこむような人生はやめたほうがいいよ」と書くんでしょうね。

二村：アルさんがお母様の話をしたので、自分の母親の話をすると、うちの母は「母親」と「父親」を兼ねていた、非常に男性的な母親だったんですね。
そういう強い女に憧れると同時に憎しみもあって、ヤリチン的に盛んだった頃は「母親みたいな強い女を俺のチンチンで征服したい」って気持ちも非常に強かったんですよ。
強い女に憧れる一方で、その強い女がセックスの時だけ俺のチンチンによって支配されてる、という絵面が好きで。

アル：お母さんに対して「父親越え」をしなくちゃならない感じだったんですね。

二村：戦うと同時に「すべてを許してもらいたい」というムシのいいことを。
なので、ぼくの撮ってきた「女の人が男の乳首を舐めて騎乗位で犯す痴女AV」というのは、どっちかというと女の人の内面を描いてきたほうだと思うんだけど、女と男の戦い、その上での恋とセックスと愛、それがいちばんエロい、みたいなのを描こうとしてた。
ただ、最近うちの母親もボケてきて、第一ぼくも年寄りになってきたし、もう母親との戦い終了かなって感じがして、どうでもよくなってきましたけどね。

アル：もう敵がだんだん弱くなってくるっていうね。

二村：なんかね、僕の母親みたいな超人的な相手ってさ、ボケてこないとさ、対等になれないというか。

アル：私も母が意識障害を起こして、私のこともわからない赤ちゃんみたいになった時、「今の母なら好きになれる」と思いました。もう私を苦しめる存在じゃないって。

二村：ぼくもやっと「ああ、この人はバケモノじゃなくて人間だったんだ」ってわかるようになって。
なんか俺もう最近、自分が強い女の人に勝つんじゃなくて「自分が女になりたかったんだな」って本当に思うようになってきた。

アル：なんで女になりたいんだと思います？