二村ヒトシ×アルテイシア Special対談 第2回
非モテと、親の呪縛と、オタク男女
二村:オタクでいうと、一部の男性クリエイターさんが「女のオタクはありえない。キャラや声優に騒いでるだけだろ」みたいなこと言って炎上してたけど、僕は全然そうは思わないんだよね。アニメやマンガに萌えてるんじゃなくて燃えてる女性のオタクをたくさん知っているので。
アル:今は女オタクの方が消費は大きいですよね。BLとかもそうですし。私の女友達はフィギュアスケートオタクでブタペストまで遠征してました。
二村:使うお金の桁が違うよね。
アル:女子校の同級生のジャニオタやヅカオタは、全国を飛び回ってますね。私みたいな引きこもりより、よっぽど活発でアウトドア派だなと(笑)。ファン同士の交流もさかんみたいですし。
男子はコレクター趣味であったり、ちょっとまた方向が違ったりしますよね。
二村:人妻の人生相談だったかなぁ。「旦那が冷たい男で…」っていう、その旦那がガンプラオタクだっていうわけですよ。
なんていうか、ぼくはロボットも好きだけどストーリーの部分も重要で、たとえば映画『パシフィック・リム』なんて「男と女が恋愛じゃない部分で、利害をこえてシンクロしあわないと地球は守れない。ホモソーシャルでは負けちゃう」って物語だと解釈したんだけど。
ガンダムであれば「男になるとは」とか「大人になるとは」とか、そういうテーマがあるわけじゃない。ガンダムの文化を通過してながら、人の気持ちが全くわからないでモビルスーツにしか興味ないなんて、バカっていうか、もったいないよね。せっかくランバラルとハモンとか出てくるのに。
アル:強い絆で結ばれた熟年カップルが(笑)。『あなた、守ってくださいましね…』(←モノマネ)
二村:『ザクとはちがうのだよ…』(←モノマネ)。そういう、かっこいい男女を見て育ったはずの夫が『冷たい男で、人間的な心の交流が一切ありません。ガンダムオタクでガンプラばかりいじってます』って妻から言われてるの聞くとガックリきちゃうんだよね…。
オタクってさ、現実の世界では、クラスでメジャーなほうの仲間に入れてもらえなくて、鬱屈したり敗北感を味わったりして、そのぶんマンガやアニメから多くのものを学んで、直接のコミュニケーションは苦手かもしれないけど心優しい人も多いはずだと思うんだよ。でも、ほら、例の著名なオタク評論家の恋愛洗脳騒動とかさあ…。ぼくも自分が心の温かい人間だとは思わないけど、心の冷たいオタクって、いったいガンダムの何を見ていたんだろうと。
アル:いやーロボットしか見てないんじゃないすか?
二村:そうか…、たしかにロボットやプラモデルにしか興味ないと、ガンダムのストーリーとかどうでもいいんだよな。
アル:男子はそっち系が多い気がしますよ。うちの夫もガンダム観ながら「ゲルググが」「グフが」ってモビルスーツの話しかしない。私は「マクベとキシリアの関係ってさあ」と話し、夫は「ザクのライフルの薬きょうがさあ」と話し、見ているところが違います。
二村:でも旦那さんは、共感力や会話力の高いオタクなんですよね?