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    ENTERTAINMENT

    旬を過ぎたイケメンの哀しい末路

    イケメン評論家の内藤みかさんがお送りするイケメンエッセイ。今回は「イケメン事件簿(2)」

    2016年早々、残念な事件が起きた。道を歩いている30代の女性をいきなり殴りつけ、バッグを奪おうとした男が現れたのだ。女性は顔の骨や歯が折れ、全治1年の重傷を負ったというのだから、驚くほどの強い力で殴られたのだろう。殴った26歳の男は駆けつけた捜査員に逮捕されたが、かつては芸能事務所に所属していたイケメンレポーターなのだという。都内の有名な大学を卒業し、会社勤めをしていた彼には、どんな心の闇があったのだろう。

    彼のFacebookには、海外旅行やゴルフを楽しむなど、20代にしては豪勢な日々を送っているらしき画像が散りばめられていたという。そんなリッチそうな彼は、なぜ、見知らぬ女性のバッグを無理矢理奪わなくてはならなかったのだろう。20代のお給料だけでは、あんなに遊ぶお金を作れるわけがないだろう。今までは実家が裕福だったのか、他に収入のあてがあったのがそれがなくなったのか。緊急にお金が必要で、強硬手段に出たのか……。どのような理由であっても、許される行為ではない。

    かつてはイケメンということでもてはやされた男性が、いわゆる旬が過ぎる時期を迎えた際に、なんらかの事件を起こしてしまうケースを、今まで何度も見かけたことがある。何歳で旬が過ぎるかは人それぞれなので一概には言えないけれど、旬が過ぎるということは、一部のイケメンにとっては不景気を意味してしまうのだ。

    今までは複数の女性からプレゼントをもらったり、ごちそうしてもらえたりしていたのに、それがすうっと途絶えてしまう。前ならすぐに次の女性が見つかったのに、旬が過ぎると次がなかなか見つからなくなる。そうなると、あまり仕事をしていないタイプのイケメンの場合、途端に行き詰まることがある。彼らにとって、女性に貢がれることこそが「仕事」だったのだから。

    今回の事件を起こしたイケメンレポーターは、数年前にも路上で女性に抱きついたことで逮捕されているというので、旬が過ぎてから事件を起こすというパターンではないのかもしれない。もしかすると、女性を驚かせたり痛い思いをさせることで快楽を感じるタイプだったのかもしれない。

    かつてちやほやされたイケメンで、旬を過ぎると盗みを考える人がいる。前までは多くの女性が自分が必要とする物を買い与えてくれていたので、モノは誰かからもらうものだ、というような不思議な思考回路になってしまうリスクがある。人からもらうということに慣れてしまうと、いざもらえなくなった時に、極端な行動に出てしまうのかもしれない。

    私は過去に、女性とケンカし、彼女を殴ろうとして思いとどまったというイケメンの話を聞いたことがある。彼は、彼女の代わりに家の柱を殴り、自分の指の骨にヒビが入ってしまった。痛々しい包帯姿を見て、相当強い怒りのエネルギーをぶつけたのだろうということがわかった。聞くと、ストレスが溜まっていたので、暴れてしまった、とのことだった。やはり彼もいわゆるお肌の曲がり角を迎える頃にさしかかっていた。

    イケメンは、ストレスを溜め込みやすい。カッコつけたがり、弱みをあまり人に明かさないので、ストレスが自分の中に蓄積されやすいのだ。ほとんどのイケメンは、自分を上手にコントロールしているけれど、一部には、ひとたび限界を超えると、大変なことになってしまう人もいるようだ。

    もちろんよからぬことを企むイケメンはごくごく僅かで、多くのイケメンは、何らかの打開策を自力で考え出す。トレーニングなどに精を出し、再びモテるようになるイケメンもいれば、ビジネスを学び、会社経営など別の手段でお金を稼ぎ始める人もいて、努力を重ねていく。

    けれど、一部のイケメン達の心の闇は深い。見知らぬ女性を殴り、バッグを奪おうとした元イケメンレポーターが本当に殴りたかったのは、もしかすると、旬を過ぎてしまった自分自身だったのかもしれない。

    • 作家/脚本家/イケメン評論家。山梨県出身。
      『イケメンと恋ができる38のルール』(ベストセラーズ)、『年下オトコ×年上オンナ』(ゴマブックス)など著書80冊以上。
      ラジオドラマ脚本『婚活バスは、ふるさとへ』(YBS)で文化庁芸術祭優秀賞&日本民間放送連盟賞優秀賞。
      舞台脚本『男おいらん』はマンガ化や小説化も。イケメン電子写真集『Japanese Hot Guys』ではカメラも。
      「内藤みかのイケメンブログ」
      http://ameblo.jp/micanaitoh/

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